いびつな願望:名大生・殺人事件/中 タリウム中毒、非公表 識者「高校の責任大」

http://mainichi.jp/area/news/20150211ddq041040007000c.html

いびつな願望:名大生・殺人事件/中 タリウム中毒、非公表 識者「高校の責任大

毎日新聞 2015年02月11日 中部朝刊

 2013年7月ごろ、宮城県内の私立高校で、校長が教職員に指示した。「男子生徒が復学します。彼は原因を言いたがっていますが、取り合ってはいけません」。12年6月ごろに突然体調を崩し、失明寸前まで視力が落ちて休学していた男子生徒への対応についてだった。

 当時を知る関係者は「校長は誰かをかばっている」と感じたという。だが、職員から質問は出なかった。復学した男子生徒は14年春に特別支援学校へ転出した。一部の職員以外には詳細は説明されず、体調悪化の理由も不明とされていた。

 先月27日、名古屋市の森外茂子(ともこ)さん(77)を殺害したとして、名古屋大学の女子学生(19)が愛知県警に殺人容疑で逮捕された。「高校時代、同級生に毒を飲ませたことがある」。警察に話した内容が翌28日に報じられると、女子学生の母校の高校に取材が殺到した。

 校長は男子生徒に異変があったことを認め、診察した医師が「第三者が関わった薬物中毒の可能性がある」と診断していたことを明らかにした。

 被害届を受けた宮城県警タリウム中毒と鑑定し、傷害事件として捜査していることも分かった。女子学生が関与したかどうかは不明だ。複数の学校関係者によると、一部の教職員や生徒の間では当時から「(女子学生が)毒物を持っているのではないか」とのうわさがあったという。女子学生は14年春に卒業し、名大へ進んだ。

 高校が男子生徒への毒物事件を宮城県に報告したのは、今回の報道の後だった。学校関係者からは「なぜ、公にしなかったのか」との声が上がる。教育評論家の尾木直樹さんは「当時からうわさがあったのなら、学校がそれを知らないはずがない。適切に対応していれば、結果は違っていたはずだ。責任は大きい」と、学校側を批判した。

 高校は先月30日に「個人情報を守る観点から、回答は差し控える」との文書を出して以降、取材に応じていない。今月2日朝、校長は校内放送で全校生徒に呼びかけた。「私も早く真実を知りたいし、話したい。でも裁判や警察の説明があるまでは答えられないのです」。そして涙声で「我が校に隠蔽(いんぺい)はありません」と強調したという。