地域おこし協力隊員の雇用打ち切り 秋田・上小阿仁村

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地域おこし協力隊員の雇用打ち切り 秋田・上小阿仁村

曽田幹東

2015年2月20日09時36分


 高齢者が多い秋田県上小阿仁村の八木沢集落で、昨年4月から集落支援にあたる「地域おこし協力隊」の男性(49)に対し、同村は新年度の雇用を延長しないと通告したことが、18日わかった。村内で活動する20代の女性隊員は年度内で離任する意向を示しており、村は3月中に複数の地域おこし協力隊員を募集する方針だ。

 同村総務課の小林隆課長は「住民から男性隊員の契約延長を望む声がなかった。トラブルがあったわけではないが、住民とうまく打ち解け合えなかったようだ。集落支援は必要なので、4月に間に合うように再募集したい」と話す。

 男性は名古屋市出身で、赴任前は青年海外協力隊に参加したり、アルバイトをしながら陶芸活動をしたりしていた。八木沢集落では住民の通院介助や除雪の手伝いなどをしていた。男性は「3年間働くつもりだったが、『更新できない』と言われれば仕方ない」と話した。村からの通告後、仕事を探し、九州で再就職が内定したという。

 地域おこし協力隊は、都会から過疎地域に移住し、地域おこしや住民の生活支援にあたる総務省の制度。雇用主は自治体になるが、国の特別交付税から隊員の給与が支払われ、任期は最長3年間になっている。同村では、月額16万6千円の給与を支払い、1年ごとに任期の延長を判断する契約だった。

 同村は2009年に東北で初めて2人の隊員を採用。この2人は3年の任期後、村が臨時職員として再雇用した。その後、現在の2人の隊員を13年7月と14年4月に1人ずつ雇用した。

 県によると、県内ではこれまで、試験的な短期雇用を除き、20人が活動を終えたが、そのうち、1年以内で雇用契約が終わったのは3人。任期は1年ごとに延長するのが主流で、延長されなかったケースには隊員の「自己都合」もあるが、具体的な件数は把握していないという。

 今回の村の判断について、東北地方で活動経験のある元隊員は「隊員は3年間働く覚悟で見知らぬ土地にやってくる。1年でクビになるなら、希望者はいなくなる。配置転換などで雇用を継続する配慮があってもよかった」と話した。

 国は地方創生策の一環として、13年度の隊員数978人を16年度に3千人に増員する計画だが、隊員の募集が全国的に増えるにつれ、人材が集まらず、採用に苦労する自治体も現れている。(曽田幹東)

■後見人のような存在が必要

 県立大の荒樋豊教授(農村社会学)の話 例えるなら、「1年間の花嫁修業がうまくいかなかった」ということだろう。どちらが悪いとは言えない。ただ、隊員側が様々な住民ニーズに耐えきれなかったり、住民側には隊員が勝手な行動ばかりで何もやっていないように見えたりして、溝ができてしまうケースはしばしば起きている。双方の思いの掛け違いは、協力隊制度が抱える問題だ。隊員が地元になじんで機能するには、隊員の活動を見守り、指導できるような地元の「後見人」のような存在が必要だろう。